飲食店の厨房の床は何故上がるのか?|出店者向け厨房設備

基礎知識

皆様こんにちは!

店舗デザイン設計会社のマティータです。

今回は飲食店を出店する際に必要な厨房の床の高さについてお話ししたいと思います。

厨房の床の高さとなると目の前にカウンター席がある場合などの接客的な観点からの計画検討も当然ありますが、今回お話しするのは設備機能的な床の高さのお話になります。

床の高さは出来れば自由に計画したいとお考えかと思いますが、どうしても必要な設備があるのでなかなかそうはいきませんね。

ではどこの部分を検討・優先して考えていけばいいのか?ポイントをお話ししていきたいと思います。

■目次■

1_床が上がる要因その①:防水

2_床が上がる要因その②:排水管

3_床が上がる要因その③:グリストラップ

4_基本的な床上げの展開例

5_業種別のおすすめ

6_まとめ

 

1_床が上がる要因その①:防水

まずは厨房の床が上がる要因となる設備を説明します。

厨房というのは当然のことながら水を多く使います。ですので水漏れ対策に防水を行うのですが、この防水というのは水が漏れない様に防水層を作っていくので床が上がる要因の一つになります(厳密には防水だけではそんなに床は上がりませんが、それに付随する工事で床が上がります)。

Q.じゃあ防水しなきゃいいのでは?

排水管には十分注意し、床も水を撒かずモップ清掃にすれば可能ですが、常に水漏れリスクは伴います。

Q.防水するメリットは何?

下階や客席への水漏れリスクが減るのと、床も水や洗剤を流しながら清掃が出来るので衛生的にも良いです。

防水を怠るとお客様や下階のテナントに多大な迷惑がかかり、場合によっては賠償問題にもなりかねますので、しっかり行なった方が良いですね。

2_床が上がる要因その②:排水管

厨房というのは調理をする場であり当然厨房機器が必要で、その厨房機器には水を使用する機器もあり排水が必要になってきます。排水管はその排水を流す管なのですが、この排水管も厨房の床が上がる要因の一つです。むしろこの排水管が床が上がる1番の要因と言っていいと思います。排水管を床上に配管しそれを隠す様に床を作る、どうしても床が上がってしまいますね。

Q.排水管の配管は床上じゃないとダメなの?

排水というのは自然の力(坂)で流れていくため、床上で勾配をとりながら配管するしかありません。

ただし高い位置にある排水などは壁につけて行うこともあります。

Q.排水管は床で隠さずに露出ではダメなの?

配管自体は機器の下などで、配管が邪魔にならないのであれば露出でも出来ます。ただし床清掃の邪魔にはなりますね。

排水管というのは厨房機器に絶対に必要なものですが、実は床が上がる一番の要因なのです。

計画を練りこの排水管をうまく対策することで、床の高さを抑えられる可能性もありますので厨房機器の配置も含めた排水計画は重要な検討ポイントです。

3_床が上がる要因その③:グリストラップ

厨房で調理をするとどうしても油分が発生します。排水と共に流れてくるその油分をとってくれる装置がグリストラップなのですが、このグリストラップも床の上がる要因の一つです。

ただしグリストラップほ種類によってはその限りではありません。

Q.グリストラップって必ず設置しなければダメなの?

法令や地域条例、家主要望などにより設置した方がが望ましい場合が多いですね。

Q.床の高さに影響しないグリストラップは無いの?

グリストラップも種類がありますが、床に埋設しないタイプ(床置型など)は床高さに影響しません。ただし置き場の問題や容量が小さい物が多いので業種によっては足りない事が多いです。

グリストラップは床埋設型だと床が上がりますが、置き場や清掃などの観点から埋設型は割と採用されています。

4_基本的な床上げの展開例

それでは実際に床はどれくらい上がるのでしょうか?

いくつか展開例をあげてみます。

<Aパターン>

[防水無し・排水管は床上配管・排水管は露出のまま・グリストラップ床置型:床FL±0]

これは床が上がらない例です。床材の厚み分くらいですが、床清掃はモップになり水漏れリスクが非常に高いです。また排水配管出来る場所も限られるので、排水に合わせた厨房機器レイアウトも検討必要です。

<Bパターン>

[防水有り・排水管は防水上配管・排水管はコンクリート埋設・グリストラップ床置型:床FL+150~200mm]

これは防水して配管も埋設するので床は上がりますが、グリストラップを埋設しない分床の高さが抑えられています。水を流しての床清掃も行えますが排水方法(薄型側溝や目皿)の検討は必要です。

<Cパターン>

[防水有り・排水管は防水上配管・排水管はコンクリート埋設・グリストラップ埋設型(超浅型):床FL+300mm以上]

これは床が上記2つに比べてより高くなり、2段で上がる計画にする例が多いです。ただ水が存分に流せるため床の清掃も行いやすく、側溝もしっかりと設置できるため排水の問題もなく衛生面での懸念がなくなります。

どの例にもメリット・デメリットはあり一概にどれが良いとは言えません。

5_業種別のおすすめ

では実際にどうしたら良いのでしょうか?難しいですがこれは飲食店の業種により判断するのが良いかと思います。

<4の展開例からすると>

・調理が少なめな軽飲食は<Aパターン>or<Bパターン>

・調理多めの重飲食は<Bパターン>or<Cパターン>

この様なイメージなのですが、厨房のこと考えると業種問わず一番理想なのは<Cパターン>だと思います。水漏れリスクも少なく、衛生的にも良い、そしてグリストラップも邪魔にならないので、実際でもこのパターンを採用されている店舗が多いです。ですのであとは客席との段差問題ですが、一番理想なのは客席の床の高さを調整する事でこれが出来れば一番良いですね。ただそれをやるにもそれだけのスペースがあるか、予算がかけられるかなどの問題もあるのであとは選択の問題になってくると思います。

 

5_まとめ

最後はまとめです。

・厨房の水漏れは大きな問題になる事があるので、水漏れ対策は十分に行う

・衛生的に問題なく営業出来るかをよく検討し計画する

・最終的には客席とのバランスが重要になってくるので全体的に計画を検討し選択する

厨房はとてもお金が掛かる部分ですので、現実的にどうしても妥協してしまう事がありますが、常に大きなリスクがある事を頭に入れてトラブルなく長く営業するにはどうするべきかという視点を忘れずに計画を行いましょう。

是非参考にしてみてください。

以上です。

最後までお付き合い頂きありがとうございます